孤高の騎士と漆黒の魔導師 Fragment-03
Fragment-03
朽ち果てた瓦礫の山。土台だけが残って、あとはすべて消失している。一歩足を踏み出すと、まだ残っていた炭を踏んだ。
霧雨が分厚い膜のように漂っている。それに山からおりてきた霧が混じって、視界が悪い。五メートル先の視界もないほどだ。
霧のなかにすすけた十字架が見えた。
かつては礼拝堂の祭壇の上に掲げられていたそれは、建物の崩落とともに地に堕ちて地面に突き刺さっていた。建築物がもともと木造だったので、金属で出来ていた十字架だけを残して焼失してしまった。
「もう何年経つんだろうな」
墓標のように突き立つ十字架に手を触れる。幾度の雨風にされされたのか、すっかり錆びて朽ちた表面がぱらぱらと地面に落ちた。
あの日もちょうど今日のような天気だった。
朝からずっと降り続く霧雨。
外で遊べないくぐずる年下の子供たち。
留守を任せるといって出て行った母さん。
あの馬鹿は……確か風邪で寝込んでいたか。確か母さんが出て行ったのも薬を貰いにいくためだったはずだ。
いつもどおりといえばいつもどおりの一日で、何事もなく不文律のように過ぎ去るはずだった。
「ああ、やめだ」
過去を振り返るのはよくない。死ぬときだけで充分だ。
ならなんで俺はこんなところにやってきたのか。半休までとって。
「あの日、あなたは何を見たんですか」
すべての元凶。俺たちだけが生き残って、魔法と出会うことになったきっかけ。
「すべてが、すべてが繋がっている気がしてならないんだ」
当事者であるはずなのに、いまだ知ることの出来ない事件の真相。
この歪で欠落だらけの円環は必ずどこかで繋がるはずだ。確証はないが、そうとしか考えられない。
「いずれ、こちらにも秘密裏に調査団を送り必要があるな」
「それで、こんどはいったいどこへ?」
薄暗い店内に、ゆったりとしたクラシック音楽が流れている。
目の前の料理に手をつけず、睨みつけてくるタリアに俺は「墓参り」と答えた。間違ったことはいっていない。
「なるほどね、あなたにもそんな人間らしいところがあるのね」
「心外だな。俺はいたって普通の人間だ」
「どこがよ」
「さあ?」
肩を竦めて飲み物を一口。
「それはそうと。あなた、この前いったいどんな話したのよ」
「ちゃんと判るようにいってくれないか」
「八神一尉よ」
「ああ、そのことか」もう二週間近くも前のことじゃないか。「たいしたことじゃない。管理局のあり方やらを語りながら安い飯を食っただけだ。なかなか、彼女は将来化けるな。人脈もあるし、実力もある。まったく以って、末恐ろしい。是非とも、敵対関係になるようなことは避けたいな」
「あなたが警戒するならよっぽどなのね」
「ああ。しかし、世界ってヤツはときどき遊びがすきなんじゃないかって思うときがある」
「どういうことよ」
「聞けば、教導隊のエースオブエース高町三尉とテスタロッサ・ハラオウン執務官は幼馴染らしい」
「いえてる。まるで三提督みたいだもの」
「まったくだ」
そう答えて俺は溜息をついた。
「さて、食べようか」
「ちょっと待って」
手を止めてタリアを見る。
「あなたから食事に誘っておいて、そんなどうでもいい話だけで終わるわけなんてないでしょ?」
「よく判ってるな」
「ならさっさと話しなさい」
タリアはそういってフォークの先を突き出す。冗談じみた仕草だが、眼は真剣だ。「あのことでしょ?」
「ああ」と俺は頷いて周囲をさりげなく見渡した。聞き耳を立てているものはいない。まあそのことを考慮して一番奥の席を予約しておいたのだが。はじめにここにやってきたときに盗聴器の有無も確認してある。
「で、どうだった?」
「駄目ね。やっぱりあの事件のデータにアクセスできない。けど、念のためアクセス履歴を確認したらちょうど三週間ほど前に外部の端末からアクセスされていた記録があるのよ」
「外部端末か。それがもしテロリストだったら怖いな。で、それはどこまでたどれた?」
「なんとかミッドのインターネットカフェからだってことは判ったんだけど、そこまで。秘密裏に動いている分、あんまり表立って聞き込みも出来ないし」
「手詰まりというわけか」
「まあそんなところ」
「しかし、外部から本局のデータベースに侵入するとは、いったいどんなハッキングの腕を持っているんだか」
「そうよねえ。それに、裏を返せば管理局の技術もその程度ってことなんだし」
「大概にして、組織が採用するシステムは、一般人が作ったものを手本にしたりする。それにネットワーク技術は日進月歩で進歩している。完璧なセキュリティを作り上げることなんて不可能なんだよ」
「身も蓋もないわね」
そういってタリアは苦笑した。
体調がヤバイ。
季節の変わり目は嫌い。
ってことで一週間と二十数時間ぶりの更新。
なんだかすげえ短いうえに本編じゃありません。
明日か明後日には更新します。
それでは。
追記 9/26午前3時
オリキャラの名前を自分で書き間違えるって。普段からうっかりしてるけど最近ちょっとボケ老人クラスにレベルアップしたかもしれん。
テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学
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体調は大丈夫ですか?無理せずゆっくり休養とったりしてください。
第2部の始まりも楽しみにしています!
では、今日のところはこれで。